964人が本棚に入れています
本棚に追加
「あの会社、スーツ着用が義務なんだもん。可愛くない」
「ショッピングピンクのワンピースや向日葵柄のパンツとか、先輩の服はなかなか斬新ですからね」
何を言っても、狼くんはにこにこ笑って受け止めてから、否定はしないけれど私の我儘には上手にスルーしてしまう。
「合併いや、吸収か。会社が吸収された時、狼くんが居なきゃ多分私会社辞めてたよ」
「辞めると思ったから、俺が出てきたんだよ。先輩と一緒のオフィスで仕事ができるなんて、俺ずっと夢だったんですから」
「……」
嬉しい様なプレッシャーのような。
でも、嫌な気持ちにならないのは、狼くんの人柄なんだろうな。
あんなに先輩先輩と、尻尾振られて駆けよられたら、思わず抱きついてしまいそうになる。
抱きつかれても、可愛くて許してしまうそうな雰囲気。
狼くんは、会社の女の子たちから凄く人気も高いしいつもディスクにはお菓子が溢れているし。
「先輩! 遅刻しますって」
腕時計を見ながらうろたえる姿は、耳が垂れた犬みたい。
スーツに着替えた私は、玄関で待つ狼君の元へ駆けだしていた。
最初のコメントを投稿しよう!