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「誰?何?なんなの?」
「もう大丈夫だよ。さあ、おいで」
土田は、手を開いて花が飛び込んでくるのを待つ。
「誰なの?どうやって入ったの?出てって!」
花はじりじりと後ずさる。
「僕も嬉しいよ。これからは現実でもずっと一緒に居られるね」
なかなか飛び込んで来ないので、土田はバッグから細めのロープを取り出した。
適度な長さを手繰り、両手に持ってピンと張る。
「あ、あ、いやッ…」
小さな花は逃げようと動いたが、土田の長い足はそれを許さなかった。
喉に撒きついたロープはほんの数秒で花の意識を奪い、土田は花を抱きしめた。
「今まで、よく寂しさに耐えてくれたね。辛かったろう」
そして花を小さく折りたたんでロープで縛り、大きなバッグに詰め込んだ。
「まったく。ダイエットなんかしなくて良いって、あれほど言っただろう。花はそのままの花で、最高に美しいんだよ」
土田は軽々とバッグを背負い、花の重さをその身に感じて絶頂に震える。
「もう招待の準備は出来ているよ。やっと本来の二人に戻れるね」
そう言って、満面の笑顔で家に帰って行った。
土田優人は、家の裏庭の縁側に座り、お茶を飲みながら花壇を眺めていた。
「僕は幸せ者だよ。こうやって君の美しい姿をずっと眺めて過ごす事が出来るなんて」
お茶を一口すすり、満足げなため息を吐く。
僕は、君の笑顔を永遠に守り続けるよ…
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