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「あ~つまんない、つまんないったらつまんない」
大学受験に失敗し、浪人生活を送る私。
受験、あんなに頑張ったのに、当日、急に体調を崩し、試験を受けることすら出来ずに敗北が決まったあの日、私は、ぜっっったい!に、神様はいないか、私を目の敵にしてると確信した。
今日だって、勉強しに図書館に来てみれば、急な夕立にあって、雨宿りなんてハメになってるし。
幸い、家にいた兄貴が「迎えに来る」なんていうけど、あのいい加減な兄貴のこと。
いつ来るのやら。
図書館の壁にもたれ掛かれながら、壁を片足で蹴り続ける。
私のイライラの原因は馬鹿兄貴だけじゃなく、この場所にもあって。
図書館はすでに閉まり、追い出され、誰かの迎えを待つ人がここには何人もいる。
少しずつ迎えが来て人数は減っていくも、そのほとんどが同年代の"異性"が迎えに来て、相合い傘でイチャイチャ帰るリア充ども。
あ~ムカツク。
私だってさ、そういうの憧れるけどさ。
ひとまず大学いかないと、そんな余裕すらない灰色の浪人生活しか出来ないしさ。
あ~もぅ。
兄貴が来るの遅いからだ。
来たら一発お見舞いしてやるんだから。
そんなとき、私に初めて神様が微笑みかけた。
「ちょっと、すみませんね」
唐突に私の前に現れた男性。
爽やかスポーツ青年っぽい彼の素敵スマイルに、顔が紅く火照る。
……虫歯が残念だけどね。
「あ、え、と、なん、でしょう?」
ちょっとドキドキしながら答える私に、目の前の彼は笑顔を絶やさない。
なに、ナンパ?
う、着いていっちゃうかも。
浪人生だということも忘れて、名前も知らない彼との甘い展開に期待しちゃう私。
ただ、やはり私に神様は味方しないようで、彼の二の句に絶句する。
「図書館の壁を蹴るの止めてくださいね」
…………しょくいんさん?
「ご、ごめんなさい」
慌てて頭を下げる私の肩を掴み、彼は優しく私の身体を前に向けさせた。
「いえ。わかっていただけたならいいんです。それでは」
そういって、雨が降りしきる外に出ていく。
「あっ」
そそくさと出ていく彼を引き留める方法を考える。
すると、服の肩や袖が濡れているのが目に留まった。
「待って!」
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