第二枠『二人の少女の記憶』

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それは新緑の茂ゆる季節の事だった。 祭囃子や太鼓の鈍い音がそこら中で聞こえ始めた夏祭り___。 まだこの頃、幼かったコハルは狐のお面を、白銀の髪の上から被って森の中を歩いていた。 その後に小さく後を付いていく少女が一人。 彼女はリル。早くに両親を亡くしており、コハルの両親によって有明家に迎え入れられた。 コハル自身もリルを気に入った様子で、実の妹のように可愛がっている。 特に何も話さず、無言で先を進んでいると小さな光が二人の目の前に現れる。 儚く、ぼんやりと輝く『それ』はリルの掌に止まる。 「……」 「リル、それは蛍って言うんだよ。仲間を呼ぶ為に発光したり、求愛をしてその後交尾をするんだよ」 「……」 リルは終始無言の侭だった。 最早、義理の姉がこんなにも聡明に現実味の帯びた話をするとは、なんて思ってはいない。 純粋に光る蛍から目を離さずに、興味深そうに見入っているからだ。 「聞いてる?」 「人間からみた蛍は、消えかけの存在です」
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