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村長は、私の身体を抱きしめながら言いました。話したのだから変わりを寄越せと遠まわしに言っているようです。私はフフフと微笑みました。
「じゃあ、お楽しみになってください」
スルスルと服を脱ぎ、みるみるうちに村長の顔が蒼白になっていきました。
「きっ、貴様っ、何者……」
「美弥でございます。貴方の愛する美弥でございますよ」
翌日のことでした。早朝に男衆の一人が血相、変えて叫びました。
「村長が、村長が殺されたっ!!」
噂は広がっていきます。
「おい、聞いたか。村長、身体中の水分、吸い取られて死んでたそうだぞ」
「やはり、坊主様の祟りか、呪いなのかもしれん、誰だ。坊主様を招き入れたのは!!」
「恐ろしい、俺は恐ろしい。坊主様がくる。必ず、ここにくる。俺は村長のように干からびて死ぬのは嫌だ」
「花嫁を、花嫁を用意するんだ。坊主様を鎮めるための花嫁を!!」
男衆の一人がそう言いました。
「美弥、すまないな。これも皆のためなのだ」
村長の代理となった男が言いました。
「坊主様を、誰が招き入れたか、わからない。しかし、村長が殺された、もう迷うことは許されない。美弥、お前を坊主様の花嫁として送り出す」
「一つ、いいでしょうか。皆が恐れる坊主様とはいったい何なのですか?」
「それは」
「私は、もうすぐ死ぬ身です。些細なことを話したところで、死人に口無し、誰に話せるわけでもありません」
スルスルと近寄り、耳元で囁きました。
「貴方が恐れる坊主様とは、いったいななのですか? それは若くして、仏へと参られた心優しいお坊様のことではないのですか?」
「どこで、その話を」
「人の口に障子は立てられないのです。さぁ、お早く、他の者がやって来てしまいます」
代理は、少し嫌そうな顔をしましたが、私が微笑むとその口を開きました。
「坊主様とは」
坊主様とは、心優しいお坊様が仏となった後、後任としてやってきな坊主のことでした。
大きく膨れ上がった腹に巨体、髭面の坊主は村人達に負い目があることを見抜くと、毎夜、酒、女、宴会を開かせ手のつけられない我が儘を言っていました。
村人達は、先代の心優しいお坊様を死なせたことを悔いていましたから、その事実を知る、この男に逆らうことができませんでした。
我慢、我慢、我慢の日々が続きましたが、ある晩、男衆の一人が言ったのです。
「あの男が、嫁を寄越せと言っている」
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