第1章

7/12

7人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
代理は、訝しそうに私を見ましたが、私にとってはどうでもいいこと、話の続きを聞ければそれでいい。 「話してはくれないのですか?」 「ここまで話してしまって、変だが、目的がわからない。冥途の土産なんて冗談だろ」 「本気ですよ。話してくれるのなら、村長を殺した犯人を教えます」 「知っているのか?」 疑われているようです。まぁ、予想の範囲内なのでいいですが、 「ええ、話してくれたのなら、犯人を教えますよ」 話さないのなら、話したくさせればいい。どうせ、もうすぐ死ぬのなら、余計な口を開いたところでどうにもならないでしょうと、言うと代理は渋々、語り出しました。 「あれは、坊主を海に沈め、一年ほどたった頃だ。海で大きな事故があった」 大きな事故、その事故は、漁に出た船がことごとく、傾き沈められ大勢の漁師たちが海に溺死したというものでした。 その頃からおかしな怪異が起こるようになりました。朝早く、村の近くでカラカラに渇いた、漁師の、事故あって遺体が見つかっていない漁師達のカラカラに渇いた死体があちこちに捨てられていました。 事故は自然災害が原因ですが、その死体が村の近くで発見され、カラカラに渇いた死体となっているのはおかしい、水死体ならもっと水を吸って、パンパンに膨れ上がっていても珍しくないからです。 不自然や事件に、村人は漠然とした不安を感じていました。一年前、あの坊主が死ぬ間際に残した、呪い、その呪いが一年、坊主が死んでちょうど一年目の時期に起こり始めたのは、単なる偶然と割り切ることは村人達にはできません。 呪いが本当にあったら? 坊主が海の怨念となって復活したら? 蓄積した憎悪が矛先を向けてきたから? 漠然とした不安に答えるように、それは海からやってきました。 全身をズタズタに叩かれ、癒えることのない肉の塊となった坊主が海から上がってきたのです。 「花嫁を、花嫁を寄越せ」 毎晩、毎晩、村人達の家を遠慮なしにやってきては、ドンドンと扉を叩き、窓が開いていれば強引に覗き、部屋に招き入れようものなら、坊主は男を殺し女を奪い、その数日後には女は事故にあった漁師達のようにカラカラに渇いた死体になって発見されます。 やはり呪いはあった、本物だった。一年を通して、坊主は帰ってきたのです。心中には復讐、以外は何も残っていません。大勢の女達が犠牲になり、貧しい村は、さらに貧しくなっていく。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加