第1章

8/12

7人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
もともと、事故で人手が足りなくなっていましたから、それは深刻な問題ですが、不幸中の幸いというものがありました。 坊主は、家の者に招き入れない、限りは家に入ることはできない。家主が恐怖に負けて、扉を開かない限り被害に会うことはありません。 村人達は、坊主の怪異を、隠語として『坊主様』と名付けました。坊主様が現れたら家に招き入れたらいけない。月の出ない晩は出歩くな、誰かが夜に訪ねてきたら必ず合い言葉を使え、恐怖を乗り越え、克服するため、そして自分達のやったことを忘れないための教訓としました。 「もう、いいだろう。これが坊主様の全てだ」 全て、これが村にまつわる、坊主様の全てでした。私はフッと微笑み、代理の男の肩に触れました。 「ありがとう、ございます。私の目的を教えてあげます」 ジュワッと代理の肩が干からびました。ヒッと悲鳴を上げて逃げ出す男を私は抑え込み喉を閉めた。 「復讐、ですよ。わかりやすいでしょう?」 何度も、何度を繰り返した。村人達が逃げ惑い、慌てるさまを笑いながら私は全身を殺した。老人も、子供も、女も関係なく、全て殺しました。そうして、私は、 「ご静聴、ありがとうございました」 ぺこりと頭を下げて、日本刀の切っ先をこちらに向けて私の与太話、廃村となっ場所で起こった陰惨な事件の顛末を少女、仮音(カオン)と名乗った少女に聞かせた。すっきりした。晴れ晴れとした気分だった。やりきった気分だった。 「どうぞ、私を、呪いの根元の私を斬ってください」 私が死ぬことで、この村で繋がる因縁をたつことができる。負の連鎖を終わらせることができるのに、仮音は日本刀を構えたままだ。 「まだ、聞いてない。貴女のことを」 「─────私?」 「貴女が、何者なのか、貴女がなぜ、村人達を殺さなければならなかったのか、全てを語らなければならない」 逃げることは許さないと、仮音は言った。復讐は終わった。あとは死ぬだけなのに、こんな私のことなんて誰が知りたがるのか不思議で仕方なかったけれど、ここまで話したのならいいだろうと思った。 「私は、私は、最初、この村にいた心優しいお坊様の娘です。そして、私の母は……」 私は語り出しました。 私の母は、子供の頃、借金返済のため、ある男に売り飛ばされました。目的は何でもよかったのです。家事手伝いでも、夜の相手でも、なんでもよかったです。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加