【2】視線は心を裏切って

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あなたの役に立ちたい 2 ◇ ◇ ◇ 二度目の下校が三度、四度となり、ふたりは一緒に帰らない日がなくなった。 すらりとした加奈江に、骨太な政。 印象がまるで違うふたりが並んで歩く姿はあっという間に同学年内で評判になり、ふたりは付き合っている、恋人同士だ、ステディだと噂でもちきりになった。 いつの間にか、政が加奈江に頼み込んでガールフレンドになってもらった、ということになっていた。 「言わせておけばいい」 政は言う。 「水流添はなよやかだから、皆の言うように合わせた方が楽だから」と。 政は見かけが同学年の学生より落ち着いて見られがちなので、イメージよりも男臭く、粗野と受け取られている。 違うのに。 彼は、とても繊細で優しい。 「もしかしたら、私の方がよほどいい加減で、乱暴者かもしれないのに?」 と言い返すと、政は決まってこう言った。 「いいんだ、人につべこべ言われるのは慣れているから」 「そんな、誤解を受けても平気なの?」 「平気ではないけれど――。勝手に思い込んでくれると、気楽ではあるだろう? 相手が期待するとおりの反応をすれば、皆安心する」 違う、そんなの、どこか変だ。 あー、とか、うー、とかうなりながら、加奈江は言葉を繋ごうとする。 「一握りの人がわかってくれればいい。たとえば……水流添が」 途中まで言って、政は口ごもった。 彼は、洗練されてはいるけれど、不器用でもあるんだ。 そして、私には嘘をつかない。 「ね、尾上君」 加奈江は正面を向いたまま、言う。 「うん?」 政も同じく、前を向いて歩きながら応える。 「私だけは尾上君の味方だから。忘れないで。できることはあまりないけど、でも、いつも力になるから」 「うん」 答えて、政は笑った。 「力になる、は男の側のセリフだけどな。水流添は、やはり黙っていた方がいいな、その方が俺も安心できる」
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