8人が本棚に入れています
本棚に追加
――私、何いやらしいことを思っているのかしら。
極力、表に出さないように加奈江は自分をいましめる。
彼が知ったら……きっと軽蔑する。それに、知られるのは恥ずかしい。
下校時に家まで送ってくれる以外、ふたりで過ごす時間はない。
休日にデートしたこともない。
いつも誰かしらが側にいる中ばかりで会う私と彼。
付き合っていると言えるのか、自分でも時々迷う。
でも、彼が隣にいない時間を考えるのが難しいくらい、今は政はなくてはならない存在だ。
学校がない日曜日や祝日が恨めしいくらい。
少しでも一緒にいたいから、いられる距離感を覚えただけなのだ。
彼は、私のことをどう思ってくれているんだろう。
友人以上、そして……恋人……なのだろうか。
後ろから見る政は、またさらに背が伸び、大きくなった。
時々、肩幅の広さに驚くことがある。
加奈江は、入学当時から、もっと言うと中学の頃から今とほとんど背格好は変わらない。
自分がどんどん小さくなる。
男と女の違いは、彼女を戸惑わせるのに充分だ。
彼は何とも感じないのだろうか。
手だって、握ったことがないのよ――
清廉な時を過ごしている彼の側で、私は、俗物みたいなことを考えて。
――恥ずかしい。
加奈江は、目が離せない彼の背中にすがっている自分をつい想像して、ひとり頬を染め、ため息をついていた。
最初のコメントを投稿しよう!