【2】視線は心を裏切って

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――私、何いやらしいことを思っているのかしら。 極力、表に出さないように加奈江は自分をいましめる。 彼が知ったら……きっと軽蔑する。それに、知られるのは恥ずかしい。 下校時に家まで送ってくれる以外、ふたりで過ごす時間はない。 休日にデートしたこともない。 いつも誰かしらが側にいる中ばかりで会う私と彼。 付き合っていると言えるのか、自分でも時々迷う。 でも、彼が隣にいない時間を考えるのが難しいくらい、今は政はなくてはならない存在だ。 学校がない日曜日や祝日が恨めしいくらい。 少しでも一緒にいたいから、いられる距離感を覚えただけなのだ。 彼は、私のことをどう思ってくれているんだろう。 友人以上、そして……恋人……なのだろうか。 後ろから見る政は、またさらに背が伸び、大きくなった。 時々、肩幅の広さに驚くことがある。 加奈江は、入学当時から、もっと言うと中学の頃から今とほとんど背格好は変わらない。 自分がどんどん小さくなる。 男と女の違いは、彼女を戸惑わせるのに充分だ。 彼は何とも感じないのだろうか。 手だって、握ったことがないのよ―― 清廉な時を過ごしている彼の側で、私は、俗物みたいなことを考えて。 ――恥ずかしい。 加奈江は、目が離せない彼の背中にすがっている自分をつい想像して、ひとり頬を染め、ため息をついていた。
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