序章

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暗がりの中で蠢く影。 闇の中からヒタヒタと不気味な音を奏でながら、その影は何かを引きずっていた。 影は何度もソレを持ち上げては周りへ奇妙に動かしている。 その都度聞こえる重い吐息と冷たい音。 既に五回目に達しようかとしていたその動作が終わると、ソレは乾いた音を不気味に闇の中へ響かせながら転がっていく。 不意に天窓から月明かりが差し込んできた。 光を浴びた影に色彩が現れる。 それは色白い青年であった。 青年の周りには幾つもの赤いポリタンクが口を開けて転がっている。 青年の足元は既に透明な液体で覆われていた。 家具からは液体が床えと重力に従って落ちていく。 それは一家所でなく部屋中で繰り返されている。
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