第1章

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「おいで」 と、朴さんがいつから携帯していたのか、ペンライトを光らせて、 会社建物と倉庫の死角へと私を誘導する。 「待って……」 この間のところより、更に奥に突き進んでいく。 本当に暗くて、 一人なら絶対一歩も進めないところ。 朴さんがいなくちゃ、絶対に一秒も立ち止まれないところだ。 カタッ!! と、 突如背後で音がして、 「ひっ!」 と、色気のない声を出しながら慌てふためいたために、 足元の何かに引っ掛かり、倒れそうになった。 ニャーと呑気な猫の声がして、 物音の主が人間でないことがわかって一安心。 「気をつけて」 と、 何だか慣れた歩き方で私に近寄り、 その体をすっぽりと抱き締めた朴さんは、 「ここから見える空が好きだ」 と、 ケイタが言う、(朝鮮人参)薬草のような匂いを少しだけ漂わせて、 腕の中の私に見上げるように促した。 今日も雲が見えない、月夜。 「あ」 キラリと、 流れ星のようなものが、確かに見えた。 だけど、 願い事、思う暇もなかった。 「そうですね、この間もそう思ってました、なんか、星が綺麗に見えるんですよね」 展望台とかいけばいいのかもしれないのに、 何故かこんなところで星を観賞しようとは…… 朴さんは、 「葵さんが、やめないで居てくれることが、 今の俺の願いだよ」 「お願いしたんですか?」 と、私の心をお見通しのような、 「もちろん。葵さんとずっと一緒に働きたい」 それでいて、嬉しい言葉を残して、 優しく私の口を塞ぐ。 「服、全部脱いだら寒いよね。 シャツのボタン、半分開けるよ」 それからは、 言葉を発する余裕を与えない位、 唇と、首筋と、 肩と胸元と、 その頂に唇を繰り返し這わせていく。 一番感じる耳にも、容赦なく熱い息をかけていくから、 「……ン……」 我慢したいのに、女の声が漏れだして、 興奮した朴さんの動きに力強さが増していく。 「キレイだ、今の葵さん」 image=492731416.jpg
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