第1章

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キレイだ、 と言って、 さっき持っていたペンライトではなく、 仕事用のネックストラップにぶら下げているスマホを私の方へ向ける。 「……え、やだ、どさくさに紛れて何 撮る気ですか?」 慌てて、シャツからはみ出した、ブラからはみ出した乳房を隠す。 「ダメだよ、これは罰だよ」 「はい?……」 何の罰かと考える隙を与えずに、 「え」 朴さんは、胸を隠す私の手を掴んで、 腰で落ちそうになった上着の袖で手早く拘束する。 やだ。 朴さんも、 岩田と同じ趣味?! 「朴さん、これ、何の罰??」 だけど、ちゃんと意識がある私は、軽く結ばれた衣類は、本気でほどこうと思えば出来るはず。 でも、できない、 というか、しない。 こんな状況を受け入れることができる女の本性が剥き出しにされつつあるからだ。 「俺をいつまでも永愛と呼ばないし……」 「……そ」 ……それは…… 慣れてないから、と言おうとして思い止まる。 山本ケイタのことは、 あっさりとそう、呼べたからだ。 「……し?」 「呼ばないし、俺にいちいちヤキモチを妬かせる顔をするからだよ」 暗闇の僅かな明かりのなか、 切ない表情を見せた朴さんは、 乱れた格好の私にレンズを向けて二回シャッターを押した。 「誰にでも優しいのは、恋人には優しくないのと同じだよ」 自分のせいで解雇される男性を心配するのさえも、 それも罪なのだと、 被写体にした、チェリーの部分に 甘噛みするように歯を立てる。 こんな風に愛されたのも、 生まれて初めてだった。
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