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「辻田さんと、
溝田さん……?」
耳を疑った。
辻田はわかる。
「辻田は素行が悪くて、上司にも楯突くし、仕事を選ぶから睨まれていたらしい」
私も、
アイツのせいで嫌な気持ちになったこと何度もあるから。
「だけど、溝田さんは?」
声を潜めながら、溝田さん解雇の理由を問う。
あの人は、
リーダーで、優しくて、仕事もできる。
解雇するなら、まず私だろう。
「溝田は、足をケガしてから休みが多かったし、ロール印刷の結果を残してなかったからね。データ上……」
ケガ?
「それは、私のせいなんですよ、
ケガして仕事出来ないのは仕方ないじゃないですか?
業績履歴なんて、そんな事情は関係なく評価されるんですか?」
理不尽な決定に少し声が大きくなる。
「山村、いつまでもイチャイチャしてねぇで、作業入れよ!」
そんな私を辻田が呼んだ。
「山村さん、君には話してしまったけど。本人たちはまだ知らない。今日の終業迄に課長から直接話をすると思うから」
「……はい……」
朴さんは、
きっと、
私が解雇の不安を抱いてると思って話してくれたんだね。
彼の優しさを感じながらも、
動揺を隠せるか自信ないまま、作業開始の準備を始める。
「男とベタベタしてると、首になるぞ、お前!」
バカにしたように笑う辻田の顔をまともに見れない。
溝田さんは、
今日も、庶務にて事務処理をしているらしい。
溝田さん、
ごめんなさい、
ごめんなさい。
罪悪感は、夜まで続いていた。
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