第1章

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「辻田さんと、 溝田さん……?」 耳を疑った。 辻田はわかる。 「辻田は素行が悪くて、上司にも楯突くし、仕事を選ぶから睨まれていたらしい」 私も、 アイツのせいで嫌な気持ちになったこと何度もあるから。 「だけど、溝田さんは?」 声を潜めながら、溝田さん解雇の理由を問う。 あの人は、 リーダーで、優しくて、仕事もできる。 解雇するなら、まず私だろう。 「溝田は、足をケガしてから休みが多かったし、ロール印刷の結果を残してなかったからね。データ上……」 ケガ? 「それは、私のせいなんですよ、 ケガして仕事出来ないのは仕方ないじゃないですか? 業績履歴なんて、そんな事情は関係なく評価されるんですか?」 理不尽な決定に少し声が大きくなる。 「山村、いつまでもイチャイチャしてねぇで、作業入れよ!」 そんな私を辻田が呼んだ。 「山村さん、君には話してしまったけど。本人たちはまだ知らない。今日の終業迄に課長から直接話をすると思うから」 「……はい……」 朴さんは、 きっと、 私が解雇の不安を抱いてると思って話してくれたんだね。 彼の優しさを感じながらも、 動揺を隠せるか自信ないまま、作業開始の準備を始める。 「男とベタベタしてると、首になるぞ、お前!」 バカにしたように笑う辻田の顔をまともに見れない。 溝田さんは、 今日も、庶務にて事務処理をしているらしい。 溝田さん、 ごめんなさい、 ごめんなさい。 罪悪感は、夜まで続いていた。
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