第1章

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まだ、ロール印刷の仕事は出来ないのに、 足を引きずって、工場にやってきたリーダーの溝田さん。 ざわついた皆を見回して、 「休憩時間か?」 と、持ち場を離れている者を静かに咎めていた。 他の部署の人間が戻るのを確認すると、 印刷工程のみんなに、 「俺、来月の20日迄で、解雇となりますから」 と、改めて悲運な通知を宣告していた。 再び、なんでだ?なんでだ? と騒ぎ出す皆を無視して、 「次のリーダーを一ノ瀬君に任せたいと思ってます。工程表や実績表の作り方を教えるから、手が空いたらこっちに来て」 と、 会社のために、ちゃんと引き継ぎの準備まで始めていた。 ……溝田さん、 偉いな。 不満だらけだろうに。 一方の辻田は、 「俺は、もう明日から来ねぇ!有給足らなくても知ったこっちゃねぇ!」 と、 今日の業務も放棄して、 (というか、仕事がないので、みんなメンテナンスをしていたのだけど) 最後までワーワー言いながら会社を後にしていた。 「元気ないな」
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