第1章

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「えっ、そうですか?」 昨夜会うはずだった朴さんと、山小屋のようなイタリアンレストランへ入る。 「ずっと浮かない顔してるよ、葵さん」 前回の例があるので、今夜はお酒は飲まないで、食事だけに留めておくつもりのようだ。 辛いパスタを食べて、しきりに水を飲んでいた。 「人の不幸があったからですね」 あ、なんか、この言い方じゃ誰か亡くなったみたい。 イヤな女だ。 冷えたら不味くなるピザを、 薄味だな、なんて思いながら、頬張ってみる。 「溝田のことが気になるよね?」 朴さんは、笑顔にならない微笑みで、 そんな私を見ていた。 「気になるって言うか、罪悪感……」 「……ふぅん、本当?」 「え?」 前、溝田さんを家まで送った時のような、 歪んだ顔をしていた。 「溝田がいなくなると、さみしがる女はいっぱい居るだろうから」 ……また、ヤキモチ?
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