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深い蒼色に染められた空。
その下を幾多の雲が風に流され進んでいる。
その遥か上に一つの点が光輝いていた。
太陽の光を渾身に受け、銀色の麗美なボディが反射した機体は、左右に長い翼があり、根元の少し前から軽い曲線を描いている。
その硝子張りの操縦席の中。
--ハァ......ハァ......ハァ。
一人の青年がマスク越しに息を荒くしていた。
青年の顔は口元の酸素マスクと飛行眼鏡に隠されており、眼鏡越しには細い目しか見えない。
常時その目は窓越しの空、斜め下を見ており、時折顔が左右に振られる。
何度目だったのか、右下を確認した時、青年はマスク越しに唇を噛んだ。
青年は両手で握られていた操縦桿を右斜め前に押し出すと同時に右足のラダーペダルを強く踏み込んだ。
垂直尾翼のラダーが右に曲がり、右翼のエルロンが下を向く。
青年の乗った機体は右に大きくバンクし、機種にある二重のプロペラが互いに逆回転をしたがら風を切った。
機体側面の筒からは青白い炎が下方に吹き出る。
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