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そして今日も、いつものように俺は少しの緊張と少しの高揚感で胸を染めながら、この時間を迎えていた。時間というのは楽しめば楽しむほど、早く過ぎるものだとこの時間を通じて知ることができた。
「この後彼女来るんだろ。コンビニ行ってくるわ。」
「何で?」
「何でって、邪魔だろ。」
「邪魔じゃないよ。むしろいてくれた方がいい。」
「何でだよ。そんな趣味ないだろ。」
「傍にいるってわかったほうが抱ける。」
「何訳分かんない事言ってんだよ。止めろよ。」
俺をどこまで苦しめれば気が済むんだ。俺に何か恨みでもあるのか。
俺は何故、この世で一番好きな人の事を、嫌いにならなきゃいけないんだ。
「彼女ね、恭介の事、好きなんだってさ。俺に相談してきたんだけど、よくよく話したら性格最悪なんだもん。大事な恭介がそんな女のものになるなんて馬鹿げてる。
だからね、俺、どうしてもそれ阻止したくなっちゃってさ、俺から口説いたの。そしたら簡単に落ちたわ。良かったね、変な女にひっかからなくてさ。恭介は俺のものだから。俺が恭介を守るよ。俺の方が早く生まれたんだから。俺は恭介のお兄ちゃんだから。」
耳がおかしくなったのかな。よく分からない言葉がたくさん入ってきた。
でも、不思議と満たされた気持ちになった。
そうだ、俺はずっと響一のものだ。今までも、そしてこれからも。
「なあ。それならさ、耳、触らせろよ。」
「それは駄目。」
「何でだよ。」
「触ったら…」
俺はこの家に生まれた。響一の弟として生まれた。
「もし、これ以上触ったら、俺の理性、持たないからね。」
俺は間違えたのかもしれない。生まれる場所を間違えたのかもしれない。
「理性?そんなの飛ばせよ。」
でも、この家に生まれて良かった。今やっと、そう思う。
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