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それは....『過去』というべきだろうか。
とある夏の日の事だった。
季節が変わることを告げる冷たい風が吹き、静まり返った校舎の中を通り抜けて行った。
見慣れた景色は赤く染まり、辺りに広がるのは床や壁を赤く染める鮮血、生々しい体の一部。
目を大きく見開きながら転がっている数々の死体。
そして、燃え盛る炎と焦げ臭いのする黒い煙。
「はぁ...はぁ...」
血まみれの右肩を押さえた少年は、校舎の中をゆっくりと歩いていた。
制服の袖は右肩の先が裂け、本来あるはずの右腕は綺麗さっぱりと消えてなくなっていた。
「他の皆は...無事なのか?」
言葉を発するほど彼の息が荒くなり、歩みがおぼつかなくなる。
「俺は...死ぬのか...?ここで...?」
少年はふとそう思った。右肩からの出血は未だに止まらない。
自分自身の体が重くなっていく。そして、少しずつ体が冷たくなっていく。
「うっ...!」
彼は床に倒れこんでしまった。
「どうせ...これ以上生きられないのなら....このまま....ここで...」
肩を押さえたまま、少年は横向きにぐったりとしていた。
すると、ふと目の前に制服姿の少女が現れた。
白くてショートボブの髪型に赤いリボンが特徴的で、セーラー服とブレザーを足して2で割ったような恰好。
意識が遠のく中、どこか寂しげな表情が彼の目に映った。
「お前は...誰だ?」
そう言った途端、彼の意識がプツリと途絶えた。
ピクリとも動かなくなった彼を少女はじっと見ていた。
「...!?」
少女は恐る恐る耳元を彼の口元に近づける。
僅かではあるものの、細々とした呼吸の音が彼女の耳に響いてくる。
彼がまだ生きていることに安心したのか、彼女の顔は一旦明るくなるも、すぐに暗い表情へと戻った。
「.......」
しばらく経ってから少女は彼の右肩に手を添えた。
二人の周りに赤色の魔法陣のようなものが現れる。
「ごめんなさい...こうすることしか...あなたを救えない...許して...」
少女の体は光を帯び始め、光はぐったりと倒れこんだ彼を少しずつ包み込んでいった。
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