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ジリジリ....
外のアブラゼミの鳴き声で俺は目を覚ました。
「ううっ....」
寝過ぎたせいで寝ぼけた俺はゆっくりとベッドから体を起こして、リモコンを手に取りテレビの電源を入れた。
テレビのニュースは熱中症で倒れた男子中学生のことを取り上げている。
今年の夏だけでも、既に200人以上の人が熱中症の疑いで病院に搬送されたらしい。
家のインターホンが鳴る。そして、ドアを開ける音がした。
何かを察した俺はクーラーの効いた部屋で布団にくるまった状態でベットの上でじっとしていた。
玄関のドアを閉める音がした。
足音が少しずつ大きくなる。
耳鳴りがするくらい豪快に部屋のドアを開ける音。
それからの....
「わーたーるー!!」
聞きなれた声と同時に、何かで頭を豪快に叩かれる音が耳元で響いた。
「い、いったぁぁぁぁぁ!!」
あまりの痛さに思わず大声を上げた。
「痛っ........!何すんだよ!?」
俺は両手で頭を抱えながら痛みに耐える。
「渡ってば....どうせあんたが部屋にいるの分かってるんだから、せめて玄関のドアを開けるくらいしたら良いのに」
長くてストレートな髪の毛をした制服姿の彼女は、私物の竹刀で右肩を軽く叩きながら偉そうに話す。
「お前こそ、予告なしに突然部屋に来てからの先制攻撃とか勘弁してくれよな」
俺は、未だに痛みの残る頭頂部辺りをさすりながら呆れたように言った。
彼女は三井真琴(みつい まこと)。近くの女子高に通う2年生で、剣道部に入っている。
意外なことに数々の大会を制し、全国大会に何回も出場している程の実力だ。
俺からすれば2つ年下ではあるが、小さい頃からの幼馴染だったからか昔と変わらずずっとタメ語だ。
「てゆうか、渡ってさずっと部屋の中にて体とかおかしくなったりとかしないの?」
「うるさい。お前には関係ないだろ」
俺は抑揚のない声で言い放つ。
「はぁ?何その言い方?せっかく人が心配してるのにそんな言い方しなくても良いでしょ?ま、どうせ『外に出るのが怖い』って言うだろうけど」
真琴の言葉に言い返せずに俺はただ黙り込んだ。
「あ!とりあえず、近くのコンビニとか行ってみる所から始めてみたら?それか、ウチの犬若丸と散歩しに行くとか!?」
「暑いくせにお前の飼い犬と外に出たくない」
「そ、それなら軽く運動したら?それこそ....部屋で簡単にできるストレッチとか!!」
「体力ない。あとめんどくさい」
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