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「本心で云ったわけじゃない」
紘斗はちょっとした間を置いたのち、首をひねりながらそう云った。
どういう意味かを考えた姫良は、しばらくしてその答えを見つけだす。
つまり、帰ってほしいわけじゃないということだ。
声を出して笑うと、紘斗がちょっと目を細めて、今度は姫良のほうが首を傾けた。
「どうかした?」
「なんでもない。おれに残業させたくなければ早く食べて仕事だ。ほかの奴もそろそろ戻ってくる」
「わたしはもうおなかいっぱい。それより“仕事”っていい響き」
姫良がおどけて肩をすぼめたのに対し、紘斗は呆れたように肩をすくめた。
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