二章、ハンバーグを食べる

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「どう、って。何が?」 「だから、人が、男が、燃えてただろ?」 「ああ、あの人。それなら」 彼処だよ、と彼がゆっくりとした動作で指し示した先に、俺は目を凝らす。 「一生懸命消火活動やったんだけど、救急車には間に合わなかったみたい」 彼の口調が沈んだことに、俺はそれを察さなければならなかったようだ。 見なければ良かったと思った。 数メートル先に黒いものが転がっている。側に救急隊員らしき人間がしゃがみ込んでいるが、それだけだ。何もせずに立ち上がってしまう。 あれが、人なのか? あの男なのか? 目の前で助けを求めていた男なのか? 目を疑わずにはいられない。 「あれ、あの男なのか?」 「そうだって言ってんじゃん。こっからじゃ黒い塊にしか見えねえけど。なに、近くで見て確認してえの? あれを?」 口端を歪めて、左に立つ彼が言う。 俺はぶるぶると頭を振った。そんな事絶対にしたくない。というか不可能だ。 燃え盛る炎の中で男が助けを求めている。顔を嬲った炎の熱と、焼ける臭い。それが思い出せる全てだった。 こっちはあの光景を頭から振り払うのに苦心しているというのに、幾つも年下の彼らは動揺するどころか楽しげに会話を交わしている。 「テロ……。これは何かテロ的なやつなのか! そうなのか!」 「確かにこれは飯テロだよ。焼き肉みたいな匂いがしたから、お腹減ってきたし。……自分もそんな匂いするのかな」 自身の腕を嗅ぐような仕草をして呟く友人に、もう一人が冷めた視線を送る。 「マジ引くわ。ブランディングとかやるつもりかよ。やめろよ。自分の肉焼ける音とか聞きてえのかよ」 「流石に身体改造は無理だよ。でも、興味が無いと言ったら嘘になるかも」 両の掌を合わせながら、うっとりとした表情を見せる。 よくない話をしているのは理解できる。自分の頬が引き攣るのがありありと分かった。
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