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『… 来月から あたし達 別々だね… 』
『うん 違う高校だからね』
中学校の卒業式を控えたある晩
サチ子はクラスメートの男子ヒロとラインのカメラ電話で話していた
『あたし… わかるんだ
別々の高校に通い始めたら…
きっと… もぅ
あんまり逢えなくなる気がするの… 』
『そ そんなことないよ… 』
言いかけて ヒロは口ごもった
『キャハハ!
ヒロ君って カメラ写り悪いんだ~』
『な 何?! そりゃ
部屋が暗いせいだろ
そういうサチ子だって!』
『あら!あたしがなぁに?』
『あ いや サチ子は…
か かわいいょ… 』
『えへへ~
そうでしょう~!
ライン電話する前にね
ママの化粧ポーチを拝借して自分でメイクしてみたんだ~♪
どぅ?』
『そっか! どうりでいつもと雰囲気が違うと思った』
『ヒロ君に見せたくて マニキュアも塗ったんだょ♪』
サチ子は自慢気に自分の右手の甲をスマホのカメラの前にかざして見せた
サチ子のスマホの液晶画面には、向こうで画面を覗き込んでいるヒロの顔が写っている
『どうなの?
ご感想は?』
サチ子にそう訊かれて一瞬 ヒロの表情が曇った
『あたしじゃ似合わないかな…』
『いや、そうじゃなく… て』
『じゃぁ なにょ』
『いや、その…
電話じゃ言えないよ』
『じゃ 会って直接聞かせて!』
『あぁ… 今度 な』
『ダメ! 今すぐ』
『え~?! 今すぐ?』
『うん!今すぐ迎えに来て!』
『こ こんな時間に?』
『 … 💧 』
『わ わかったよ
すぐ迎えに行くよ』
ヒロは、やれやれ という顔でライン電話を切ったものの
サチ子からの誘いに内心喜びを隠せない面持ちで、急いでコートを羽織ると自分の部屋を飛び出した
そして 物語は
キッサさんのイラスト
『月夜』
のシーンにつづく
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