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季節は春、高校入学式。
私、水島ひかりはずっと入りたかった私立の女子高校へと入学した。
「ひかり、また宜しくね!」
その陽気な馴染み深い声と同時に、背中をポンッと叩かれ振り向く。
「美矢ちゃん、うん!中学も高校も一緒だなんて嬉しいねっ」
ひかりは、童顔に柔らかな満面の笑みを見せ嬉しそうに言う。
肩まである猫っ毛のある髪、目はぱっちりな二重、背は……とても低い。
「ひかりぃ、高校で身長延びるといいねー!あはは」
「ば、馬鹿にしないでよ!今日の今日という日まで牛乳をかかさず飲んできたのよ!卒業までには148センチしかない身長が180センチには伸びてるんだからっ」
口を脹らませてひかりは、ふて腐れる。
その姿が可愛らしく思え、美矢は妹を可愛がるように頭を撫でてやる。
まるで、姉妹のような二人の関係は中学時代からなにも変わることはない。
これからも、ずっと……
「あ……」
ひかりは、思わず校庭の大きな桜の木をみて目を輝かせる。
そこには、入学式を祝うのがうれしいばかりかの桜が美しく咲いている。
と、そのときである。
職員玄関から出てきた、背の高い男性職員だろうか、スーツを着た若い男が現れる。
真っ黒いさらさらの髪、
短く切った短髪、肌の色は白く、とても容姿が整っていた。
「ちぃ、にい……」
ひかりは、ポツリとそう呟く。
そして、何かを思い出したかのように勢いよく男に向かって走り出す。
美矢は、引き留めたがひかりは無我夢中だったため、美矢の言葉を無視して、いままでにない真剣な様子で、ひかりは男のスーツの裾を掴む。
そして、息をのんだ。
「ちぃ兄ちゃん……だよね?」
「え、きみは……」
「ひかりだよ!ちぃ兄ちゃんの妹のひかりだよ!あ、……そかお母さんたちが離婚してから随分経ったもんね……でも、私はわかるよ!大好きだったちぃ兄ちゃんのこと忘れるわけないもん!」
「えっと……ごめん。ちょっとこっち来て」
戸惑った様子はあまりない顔で、ちぃ兄ちゃんと呼ばれる男はひかりの手を掴み体育館の裏に連れ込む。
人は誰もいない。
「ちぃ兄ちゃん?」
「うざい」
「え?」
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