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赤い糸。小指と小指を繋ぐ、私にしか見えない不可視の糸。その糸がどういう意味なのか知るのは、そう遅いことじゃなかった。恋人同士、互いに想いが繋がった人同士が赤い糸で繋がっていた。仲良く手を取り合う恋人同士、ほんの些細なことでも楽しそうに笑い合う、彼氏彼女、羨ましくて、見ていると心がポカポカと温かくなって私もいつか、そういう相手が見つかればいいと思っていた。そして、高校生になって私の小指に、赤い糸が繋がっていることに気がつく。
「…………まぁ、なんてロマンチックーーーって、何で相手が」
私はため息混じりに、
「女の子なの?」
私も女の子、赤い糸の繋がる相手も女の子、このままいくと私達はいつか恋人同士になってしまうかもしれない。長年、赤い糸を見てきた私にはそういうのがなんとなくわかる。その恋が成就か、未満か違いはあっても、赤い糸は必ず双方を繋ぐ。相思相愛のカップルにしてしまう。
「私は同性愛者じゃないんだけどなぁ」
繋がってしまった、赤い糸を見つめながら呟く。
「見よッ!! 我が僕、ギガノドンッ!!」
教室の中央、自分の机に仁王立ちしながら、自作っぽい人形を片手に騒ぐ女の子がいた。名を宮島(ミヤジマ)高校生になっても、痛い中二病が抜けきれない電波女で、脳内は本当にお花畑の自己中さん。授業中、休み時間、問わずに自分の世界に没頭している自由人、そして、私の赤い糸が繋がった相手だ。
学校は小さな世界の縮図だ。異物は排除される。目には見えない奇妙な人間関係が歯車のように重なりあって、グルグルと車輪を回すことで学校は成り立つ。
「アホだろ」
そんな歯車の中で、一個か、二個ほど逆回転をする歯車がある。それが宮島だ。
「ギガノドン、ドドドドドト、ロケットパンチッ!!」
宮島は机を飛んだ。ロケットパンチ、つまり、人形のギガノドンを振り回した。ロケットパンチって世代が古い。
「え? ちょっと、なんで」
机を飛んだ宮島が、私のほうに飛んできた。
「おお、そこのお方、どいてください。ギガノドンのロケットパンチは地球を破壊するほどのエネルギーがあるので」
すと、訳わからん、設定を叫んだ宮島が私を下敷きに落下する。女の子らしくないゲボッと変な声が出た。
「危ないわね、なにすんのよっ!!」
腰をしたたかに打ちつけて片目をつぶりながら叫んだ。
「お、おお、般若がおる」
「誰が般若だっ!!」
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