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宮島は追い詰められた猫のように、眉をハの字にした。自分の世界がドンドン崩れていくのだろ。いつもは適当に受け流されていたから、こうやって真面目に相手されると困る。矛盾だらけの世界を守れない。車輪を回せない。
「宮島は、宮島で、宮島を」
宮島、宮島、うるさい。
「殺す?」
「なぜ、そうなる?」
「貴女、とても怖い顔してる。宮島、そういうの苦手なの」
「これはもとから、目が悪くてね。よく睨んでるって誤解されるんだ」
あーっと眉間に寄ったシワを揉んだ。宮島が怖がってたのは、これか。
「怒ってない?」
「怒ってるって言ったら?」
「ギガノドン、サヨナラだ」
「ギガノドン売るなよ。可哀想だろ。怒ってないよ」
怒ってないと答えると、宮島はパッと顔を上げた。ギガノドンをギュッと握りしめていた。
「でも、ほら、その乗っかって、痛くて、怒らせちゃったし」
道に迷った子供のようにウルウルと視線を揺らす、宮島は見ていて、とても可哀想な奴だった。
普段から痛くて、可哀想な奴だったけれど、これは別の意味で可哀想だ。私は宮島のことは何も知らない、宮島から自分の境遇を聞いても、同情や慰めたりはしないだろう。
「何度も言ってるでしょ。ごめんなさいでいいって」
「宮島は、他人の心がわからない。謝っても気持ちがどうなったか、わからない。宮島は人間が怖い」
人間が怖い。
「宮島は悪くないでも、みんな、宮島のこと悪いって言う。宮島は宮島のやりたいようにやってるだけなのに、宮島は悪い? 悪? 正義、違う?」
「私に聞くなよ。つーか、知るか」
私はお前なんか、興味ないんだ。赤い糸で繋がれてるからって、特別になったりしない、したくない。
「……うー」
「唸るな」
「お腹、すいた」
「知るか」
「ぐー」
宮島の腹の虫が鳴いた。
「せめて、言葉にしろ」
「……怒ってる」
また、眉をハの字する。
「怒ってないッ!!」
「怒鳴った」
イラつく、ムカつく、イライラする。なんなんだよ。こいつと放置したいのにできない。この眉をハの字にして見つめられると困る。
「じゃあ、そのご飯でも食べに行くか?」
「なんで?」
「私もお腹すいたからだ」
「ギガノドンも同行していい?」
「勝手にしろ」私はお前のお母さんか。
「お母さんみたい」
ギュッと手を繋いだ宮島がエヘヘと笑う。考えが同じで気恥ずかしくて、
「うっせー」と叫んだ。
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