第1章

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宮島は追い詰められた猫のように、眉をハの字にした。自分の世界がドンドン崩れていくのだろ。いつもは適当に受け流されていたから、こうやって真面目に相手されると困る。矛盾だらけの世界を守れない。車輪を回せない。 「宮島は、宮島で、宮島を」 宮島、宮島、うるさい。 「殺す?」 「なぜ、そうなる?」 「貴女、とても怖い顔してる。宮島、そういうの苦手なの」 「これはもとから、目が悪くてね。よく睨んでるって誤解されるんだ」 あーっと眉間に寄ったシワを揉んだ。宮島が怖がってたのは、これか。 「怒ってない?」 「怒ってるって言ったら?」 「ギガノドン、サヨナラだ」 「ギガノドン売るなよ。可哀想だろ。怒ってないよ」 怒ってないと答えると、宮島はパッと顔を上げた。ギガノドンをギュッと握りしめていた。 「でも、ほら、その乗っかって、痛くて、怒らせちゃったし」 道に迷った子供のようにウルウルと視線を揺らす、宮島は見ていて、とても可哀想な奴だった。 普段から痛くて、可哀想な奴だったけれど、これは別の意味で可哀想だ。私は宮島のことは何も知らない、宮島から自分の境遇を聞いても、同情や慰めたりはしないだろう。 「何度も言ってるでしょ。ごめんなさいでいいって」 「宮島は、他人の心がわからない。謝っても気持ちがどうなったか、わからない。宮島は人間が怖い」 人間が怖い。 「宮島は悪くないでも、みんな、宮島のこと悪いって言う。宮島は宮島のやりたいようにやってるだけなのに、宮島は悪い? 悪? 正義、違う?」 「私に聞くなよ。つーか、知るか」 私はお前なんか、興味ないんだ。赤い糸で繋がれてるからって、特別になったりしない、したくない。 「……うー」 「唸るな」 「お腹、すいた」 「知るか」 「ぐー」 宮島の腹の虫が鳴いた。 「せめて、言葉にしろ」 「……怒ってる」 また、眉をハの字する。 「怒ってないッ!!」 「怒鳴った」 イラつく、ムカつく、イライラする。なんなんだよ。こいつと放置したいのにできない。この眉をハの字にして見つめられると困る。 「じゃあ、そのご飯でも食べに行くか?」 「なんで?」 「私もお腹すいたからだ」 「ギガノドンも同行していい?」 「勝手にしろ」私はお前のお母さんか。 「お母さんみたい」 ギュッと手を繋いだ宮島がエヘヘと笑う。考えが同じで気恥ずかしくて、 「うっせー」と叫んだ。
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