第1章 春が来た!

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松野が着ている制服をじっと見る。 ブレザーに、桜の花びらの校章、 俺と同じ。 「ホンとに受かったんだ。 うちの学校。 それ聞いたとき、 ジョークだと思ったけど。」 松野は、 胸につけた校章を誇らしげに、 こっちに向けた。 一応、地元では進学校。 松野の成績では厳しかった。 っていうか無理だろうと 先生も、俺も思ってた。 同じ塾で好きな男ができたから、 そいつと同じ学校に行きたいって、 いきなり言い出して、 人が変わったみたいに、猛勉強した。 それでも 最後の模試は、だいぶ悪くて 20%未満の合格率だったのに、 それを跳ね返しての合格だった。 「ここまでやると、恋愛も、 ちっとは意味があるのか」 と松野に聞こえないようにつぶやく。 「藤吾にはすごく感謝してるよ。 ずっと勉強見てくれてたし、 イケメンだし、 相談にも乗ってくれたから!!」 松野は俺の腕に飛びついた。 「バカ、やめろ。くっつくな。」 頭をバコーンと手でたたく。 痛いって、にらむように こっちを見るのがいつもの松野だ。 小学校、中学校、 同じクラスにならなかったのが 二年間だけ。 俺が小学生の、 くそ生意気なガキだったとき、 鼻持ちならないやつって、 みんなに無視されたときも、 しつこくそばにいてくれた。 受験勉強見るくらい、お安い御用だ。 ちょっとは、 そのときのお返しができたらと思った。
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