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松野が着ている制服をじっと見る。
ブレザーに、桜の花びらの校章、
俺と同じ。
「ホンとに受かったんだ。
うちの学校。
それ聞いたとき、
ジョークだと思ったけど。」
松野は、
胸につけた校章を誇らしげに、
こっちに向けた。
一応、地元では進学校。
松野の成績では厳しかった。
っていうか無理だろうと
先生も、俺も思ってた。
同じ塾で好きな男ができたから、
そいつと同じ学校に行きたいって、
いきなり言い出して、
人が変わったみたいに、猛勉強した。
それでも
最後の模試は、だいぶ悪くて
20%未満の合格率だったのに、
それを跳ね返しての合格だった。
「ここまでやると、恋愛も、
ちっとは意味があるのか」
と松野に聞こえないようにつぶやく。
「藤吾にはすごく感謝してるよ。
ずっと勉強見てくれてたし、
イケメンだし、
相談にも乗ってくれたから!!」
松野は俺の腕に飛びついた。
「バカ、やめろ。くっつくな。」
頭をバコーンと手でたたく。
痛いって、にらむように
こっちを見るのがいつもの松野だ。
小学校、中学校、
同じクラスにならなかったのが
二年間だけ。
俺が小学生の、
くそ生意気なガキだったとき、
鼻持ちならないやつって、
みんなに無視されたときも、
しつこくそばにいてくれた。
受験勉強見るくらい、お安い御用だ。
ちょっとは、
そのときのお返しができたらと思った。
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