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「入学式早々に遅刻するなんて……。なにかあったんですか?」
「いやー、今日が入学式だってこと忘れてましたー」
「今度からは気をつけてくださいよ」
「はーい」
いきなり遅刻するとはなかなか度胸のある奴だ。
「それでは入場するので、みなさん付いてきてください」
他のクラスが体育館に入るのを見送り、俺たちのクラスも入場する。
拍手の音が響く体育館。新入生はどこか歩き方がぎこちない。在学生は新入生を比べるように見る人もいれば、隣の人と何かを話す人もいる。
「新入生一同着席」
その言葉でおよそ300人の生徒が一斉に座る。
「校長の言葉。校長先生、お願いします」
特に珍しいこともなく、式は進行する、と思っていた。
「入学おめでとう! 以上だ!」
壇上に上がった白髪の男性はその一言で、自らの役目を終わらせた。それで良いのか、校長。
「続いては生徒会長から」
黒髪で長髪の女子生徒が壇上に上がる。
「おはよう、諸君。まずは入学おめでとう。君たちはこれから、この大国高校でいろいろな経験を積み重ねると思う。その経験はこれから先の人生でかけがえのないものになるはずだ。一見すると意味のないようなことでも、きっと何かの役に立つ。そのことを忘れないでほしい。そして後悔をするな。何かをしなかったことへの後悔は絶対にするな。それくらいだったら行動して後悔したほうが良い。迷ったら進め。それから……」
なるほど、素晴らしい言葉だ。若干長いが。いや、かなり長いが。もう話し始めてから10分以上経ってる。
「……以上だ」
生徒会長の話が終わり、その後は淡々と式が進められる。
「以上で入学式を終了いたします」
終わった。各クラスは担任の指示に従い、各々の教室に戻っていった。
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