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「てめえ、いいかげんにしろよ?」
おそらくリーダー格の不良が、臨戦態勢をとった。こいつは身体を鍛えているな。マッチョというやつか。
「レオくん、やっちまえー!」
デブの不良が声援を送る。お前、何にもしてないな。
「おら!」
レオくん、とやらが蹴ってきた。俺はなんとか避ける。なかなか良い蹴りだ。おそらく空手か何かの経験者だろう。
俺は一歩踏み込み、顎を狙いパンチを打つと見せかけ、不良の腹を殴った。顔をガードしていた不良は、がら空きのみぞおちを殴られて顔をしかめる。大半の奴はこれでダウンする。いや、今初めてやったけど。
「くっ……」
苦しくて喋ることが難しいみたいだ。
「レオくん! 大丈夫!?」
デブと調子が心配して駆け寄る。どうやら、もう襲ってくる気はないようだ。
「こんなこと、やめにしようぜ。意味がない」
俺はなんとか、なだめようとする。そうだ、意味がないのだ。本当にくだらないことだ。
「お前の顔は覚えたからな……」
そう言って不良達は立ち去った。一件落着だ。捨て台詞は気にしない。
「あ、あの……、ありがとうございます」
女子高校生がお礼を言ってきた。いつのまにか遠くに隠れてたみたいだ。
「ああ、いいよ、気にするな」
と言ってから思った。もしかしたらこの人は先輩という可能性もあるな。敬語を使うべきだったか。
「私、1年生です。琴浦ことうら 心こころっていいます」
同級生か。良かった。
「俺は山本大和、同じ1年だ。よろしくな」
「はい!」
知り合いがいない新生活は不安もあったが、とりあえずは知人と呼べる人物とも出会えた。
案外、順風満帆に事が進むかもしれないな。
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