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「そういえば、大和君はあの女の子と知り合いなの?」
「女の子?」
「ほら、あの席の」
そう言って優木は琴浦を指差した。
「ああ、琴浦のことか。知り合いと言えば知り合いだな。今朝知り合った」
「すごい最近だね」
優木は笑いながら、なるほどね、と言っている。何が「なるほど」なのかはわからないが。
優木としばらく談笑していると、教師と思われる人物が教室に入って来た。
「初めまして。私は利根橋 京子(とねはし きょうこ)といいます。このクラスを1年間担当するから、みんなよろしくね」
教師の自己紹介が終わり、生徒の出欠の確認が始まった。
相川さん、安藤くん、稲葉さん、……次々と名前が呼ばれていく。
これは俺の自論だが、返事の声の大きさなどで、大体の人間性などがわかるような気がする。
このような時に声が小さい人は、自分に自信がないような、そういう印象をうける。
もちろん俺は誰よりも大きな声で返事をした。
「うーん、何人か来てない人がいるみたいね」
たいして問題でもないように、利根川先生はつぶやいた。
空いてる席は三つある。三人来ていないということか。多くないか?
「じゃあ、体育館に移動しますよー」
入学式は体育館で行われる。大国高校には講堂もあり、始業式などはそこで行われるのだが、入学式と卒業式に限ってはなぜか体育館なのだという。
「はーい、とまってー。クラス毎に中に入っていくから、列崩さないようにね」
ふむ、おそらく在校生はもう体育館の中で待っているのだろう。
「すみませーん! すみませーん!」
女子が、小走りで利根川先生に近付いて行った。
どうやら遅刻をした生徒らしい。
周囲がざわつく。
遅刻してきたことへの反応なのだろうか。それとも彼女の髪の毛が、この大国高校では珍しい金髪だからなのだろうか。
まあ優木も金髪だが。
しかし、あの女子の金髪はおそらく地毛だろう。と、どうでも良い推測をしてみる。
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