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踵を返して防火扉を
開けようとした瞬間、
壁と扉に手をついて、
深町さんはあたしを
閉じ込めた。
「……やめて。
関係ないじゃない。
深町さんと付き合う気はない、
いい友達兼いい同僚でいたい。
これでよくない?」
「よくない」
低く、少し掠れた声が
後頭部の上から響く。
織部先生の優しい声とは違う、
露骨に男を意識してしまう
深町さんのその声を、
刺してくるようだと思った。
抵抗せずに聞いていたら、
このまま扉にでも
縫い止められてしまいそう。
「……言っただろ?
織部克行の前の女」
.
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