五試合目

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灯台もと暗しって。本当に、周りが見えてないこと言うんだな。 「…………瑠依?」 さっきまで冷たかった目が、少し揺らいで。黙って涙を流す俺を見ている。 「やるなら、さっさとやれよ………っ。 やる気が失せたんなら、俺の上から退けよ…………っ!」 これ以上、柊を見ていられなくて。 遠くを見るように、天井だけを見つめた。 「……………………………。」 フ………っと、掴んでた手首の力が緩む。 そして、静かに、柊は俺の上から退いた。 「ーーーーーー………。」 重みが無くなって、ホッとした。 だけど、その反面。残念に思う自分もいた。 どうせなら、メチャクチャにされて傷つけられたかった。 そうでもされないと、俺は、お前を忘れられそうもない。 「…………ごめん、瑠依。」 てっきり、今のことを謝ってるんだと思ったのに、柊は「そうじゃない」と続けた。 「瑠依は、追い詰められると逃げたくなるって、昔から知ってたのに。 ………試合の時、追い詰められて逃げ出したくなって、それでも踏ん張ってたのは、後ろに俺が居たから、だよね。 俺が、瑠依の支えになってたんだよね? それなのに、俺が追い詰めたらダメだよね………。逃げ場を無くしたら、ダメだよね。」 俺の涙を指で拭いながら、柊が呟く。 なに………?何のことだ…………? 「ねえ、瑠依。俺、待ってたんだよ?」 再び、柊は俺の上に跨って。俺と視線を合わせるように、のぞき込んできた。 「………なに、を。」 「瑠依が、自分から俺に近づいてくるのを。」 ………………は?なに?訳わかんねえんだけど。 「瑠依、知らなかったでしょ。」 ゆっくり柊が近づいてきて、俺の右の耳元に顔を寄せた。 「……………俺が、瑠依の事、高校の時からずっと好きだって。」
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