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灯台もと暗しって。本当に、周りが見えてないこと言うんだな。
「…………瑠依?」
さっきまで冷たかった目が、少し揺らいで。黙って涙を流す俺を見ている。
「やるなら、さっさとやれよ………っ。
やる気が失せたんなら、俺の上から退けよ…………っ!」
これ以上、柊を見ていられなくて。
遠くを見るように、天井だけを見つめた。
「……………………………。」
フ………っと、掴んでた手首の力が緩む。
そして、静かに、柊は俺の上から退いた。
「ーーーーーー………。」
重みが無くなって、ホッとした。
だけど、その反面。残念に思う自分もいた。
どうせなら、メチャクチャにされて傷つけられたかった。
そうでもされないと、俺は、お前を忘れられそうもない。
「…………ごめん、瑠依。」
てっきり、今のことを謝ってるんだと思ったのに、柊は「そうじゃない」と続けた。
「瑠依は、追い詰められると逃げたくなるって、昔から知ってたのに。
………試合の時、追い詰められて逃げ出したくなって、それでも踏ん張ってたのは、後ろに俺が居たから、だよね。
俺が、瑠依の支えになってたんだよね?
それなのに、俺が追い詰めたらダメだよね………。逃げ場を無くしたら、ダメだよね。」
俺の涙を指で拭いながら、柊が呟く。
なに………?何のことだ…………?
「ねえ、瑠依。俺、待ってたんだよ?」
再び、柊は俺の上に跨って。俺と視線を合わせるように、のぞき込んできた。
「………なに、を。」
「瑠依が、自分から俺に近づいてくるのを。」
………………は?なに?訳わかんねえんだけど。
「瑠依、知らなかったでしょ。」
ゆっくり柊が近づいてきて、俺の右の耳元に顔を寄せた。
「……………俺が、瑠依の事、高校の時からずっと好きだって。」
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