一試合目

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想定外の事が起こると人間ってパニクるって。 身を持って、体験した。 「注目ー!!誰連れてきたと思うー?」 高校の同窓会。10年ぶりに顔を出したんだ。 あいつとは、クラスが違ったから。まさか再会するなんて思ってなかったから。カンペキ油断してた。 「藤田、懐かしーだろ!お前ら、部活のペアだったもんな!?」 「………ああ。」 「今、店の前で会ったから誘ったんだ」と、ドヤ顔で話すヤツを殴りたい。 俺が、今まで、どんな思いで………っ! 「久しぶりだね。瑠依。」 「……………………………おう。」 安田 柊(しゅう)。高校の部活のバドミントンで、俺のペアだったやつ。 …………………俺の、好きだったやつ。 「アイツに捕まってさ。断ろうとしたんだけど、瑠依がいるって聞いたから。………隣、いい?」 「…………………….。」 返事してねえのに、柊は俺の隣に座る。………くそっ。何気に近い。 「10年ぶりだね。瑠依、ちっとも連絡くれないから。」 「忙しかったんだよ。」 「相変わらず、素っ気ない。」 フフ、と、静かに笑う柊。そんなとこ、少しも変わってない。 「それでも、瑠依が何考えてるか、プレイ中は分かってたんだけどな……….。途中から、分かんなくなったよ。お前のこと。」 「…………………………。」 ずっとだ。10年間、ずっと。耐えてきた。考えないようにしてた。 「ねえ、瑠依。」 消えたと思ってた。もう、跡形も影もないと。 「あの時、瑠依は、何を考えてた………?」 だけど、実際は。少しも消えてなかった。あの頃とちっとも変わってないお前に、否応にも心が引きづられる。 「……………………何も。」 自分の思いを飲み込むように、グラスの中のアルコールを一気に煽った。 俺は、一生。この男以外の人間に惹かれることはないと。 確信してしまった。
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