四試合目

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絶体絶命って、こういう事かと。 だからといって、体験なんてしたくなかった。 「ちょっ………!待てって、柊!」 何も言い出さない俺を引っ張って。 ホテルの中に入った柊は、勝手に部屋を決め、俺をベッドに投げた。 「ーーーー柊!聞けって!」 「何を。」 背後からスーツの上着を脱がされ。俺の上に馬乗りになった柊は、自分のジャケットを脱ぎ、ネクタイをシュルっと抜いた。 「マジで、待てって!お前、こんなことして…………っ、そもそも男抱けんのかよ!?抱いたことあんのかよ!?」 俺を押さえつけながら、器用にシャツのボタンを外していく。 「ないよ。ある訳ないでしょ。」 俺を見る目は、相変わらず冷たい。 なんで、そんな目でお前に見られなきゃいけないんだ………! 「だったら、なんでこんな事………っ!」 「そういう瑠依だって。」 俺をより強く押さえつけるためか、腕を強く掴んでくる。その力が、痛くて。顔が歪む。 「抱かれたことあるの?もう、経験済み?…………ああ、誰でも良かったんだっけ。知らなかった。瑠依って、淫乱なんだ。」 「ーーーーーっ、」 『淫乱』 その言葉に、目の前が真っ暗になった。 なんで、お前に、そんな風に言われなきゃならない? 俺、お前に何かした?ほっとけばよかったじゃん。俺が誰といて何をしようとしてたって。 今まで、抵抗していた力が抜ける。 「…………………瑠依?」 もう、いい。そう思いたきゃ、思ってろよ。そして、もう、俺に構わないでくれ。 「…………やりたきゃ、やれよ。」 もう、どうなっても、いい。 グチャグチャに、壊してくれればいい。 目頭が熱くなって、目の前の柊の顔が見えなくなった。
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