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学校帰りにいつも通る小さな公園のベンチに腰掛けると、ひんやりとした感触がお尻から伝わる。
辺りはもう真っ暗で、はぁと吐く白い息を見るたびに気温の低さを実感する。
首にぐるぐると無造作に巻かれたマフラーは、私の好きなーーー水色
「いい加減帰んなきゃな…」
ゆっくりとベンチから立ち上がり、冷えた足を何とか動かして歩を進める。
この公園から家までは徒歩約10分くらい。
帰り道の“目的”のためだけに通っていた、小さな寄り道。
それも、今日で終わりなんだと思うと無意識に居座ってしまっていた。
「……あ」
ふと頬に落ちてきた冷たい感触に、空を見上げる。
ハラハラと落ちてきた白い結晶は、触れるとすぐ溶けてしまうーーー雪だった。
掴んでは溶け、消えてしまう白い結晶
この結晶はまるで“彼”みたいだな、なんて思いながら苦笑する。
自分の目元から、ツー…と温かいものが溢れるのを感じ、思わずごしごしと袖で頬を擦り、再び歩き出す。
ーーーーたぶん、もう、好きじゃない
高校三年、冬。
数時間前に言われた大好きな彼からの言葉は、私達の関係に終止符を打つものだった。
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