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“好き”
湊の口から吐き出されたその言葉が、やけに耳に響いた。
思わず湊をガン見していると、湊はそんな私を見て、あんま見るな…と弱々しい声で呟いた。そして、私から視線を反らすように、パッと下を向いて名簿作りを再開した湊に、私も視線を下に落とす。
(こんな表情の湊……見たことない)
私が知っている湊は、とにかくいつも明るくて。
焦ってるとこなんか見たことない、穏やかな表情をしている湊ばっかりで。
……だから、余裕なさそうに自分の首もとをガシガシと掻いている今の彼は、とても落ち着きがないように見えた。
(…なんか、この湊を、もうちょっと見ていたい)
そんなことを思ってチラッと視線を上げると、パチッと合った視線。
目が合った、と思った瞬間には
「……っ…見るなって、言ってんだろ…」
湊はさらに顔を赤くして、再び下を向いた。
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