4060人が本棚に入れています
本棚に追加
/1483ページ
瞬間――彼女の動きが止まり――
泣きそうな――それでいて、どこか穏やかな笑顔を見せた。
「知ってる……」
アキラの声が震える。
「知ってるの……。教えてくれたから……」
“僕には大陸に妻と息子を残してきている。忘れることはできない”
「でも、私のことも大事だから……」
「バカか!! お前は!!」
たまらずに、アキラに怒鳴りつけると、彼女はビクッと身体を固くして、俺の腕を離した。
「そんなものは詭弁だ!! 卑怯な男の詭弁を真に受けてどうするんだよ!! 妻と息子を大陸に残してる? 忘れられない? それでも君が大切だ? ふざけるな!!」
これは何に対しての怒りなのか。
妻と息子が忘れられないと言いながら、アキラを抱いた光姫に対してなのか――
そんな光姫に全てをゆだねたアキラに対してなのか――
わからないまま、彼女を怒鳴りつける。
最初のコメントを投稿しよう!