第1章

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 じっと身構えていたが、いつまで経っても何も起きる気配がない。恐る恐る目を開けてみると、そこには大きな傘を片手にナイフとしのぎを削る佐々さんの姿があった。 「遅くなってすみません。でも組体操は成功させましたよ」  そう報告をしつつ、眉一つ動かさずに屈強そうな相手を跳ね返す。そのまま急所へ突きを繰り返し、足払いをして相手を転ばせた。  二対一なのに、たいへん余裕そうである。  それに対し相手の二人は、切羽詰まったように言い訳をした。 「ち、違うんすよ、ベルフェゴールさん。俺らはただ……」 「……お前ら、抜けるって言ったとき散々私のこと殴ったよな? それでチャラになったんじゃないのか? ……なんとか言ってみろ、この××××!!」  うわ! 佐々さんが放送禁止用語を! 「その上この人は……っ、もういい。手加減とか、そういうのやめた」  そして、彼女は傘を捨てた。 「この人に手を出すのがどういうことか、骨の髄まで教えてやるよ」  ここから先は、R18G。  この後叔父さん達が駆けつけてきて、全く原形をとどめていない元人間の顔を眺めながらふーんと唸った後、後は大人がやっておくから気にしなくていい、とにっこりした。  なんでも叔父さん達の元にも手紙やらいたずら電話やらが来ていたらしく、ちょうど犯人特定をし終わった頃に事件が起こっていたらしい。  羅切の近江家再来の予感がする。  僕らはせめて閉会式だけでも出たらどうだという叔父さんの言葉により、一旦学校へ戻ることになった。  その道程で、佐々さんはぽつりと言った。 「あの、すみませんでした。私の個人的な因縁に近江さんを巻き込んでしまって……」 「……何言ってんの。佐々さんは宣告通り、僕を守ってくれたじゃん。それに僕の方こそへなちょこで、お手数お掛けしたっていうか」  足がすくんで動けないとか、情けないし。 「それにしても、佐々さんがあんなに喧嘩が強いなんて驚いたなあ。おしとやかそうに見えるのに」  彼女は小さく微笑んで、それに対し何と言おうか迷っているようだった。だが、やがて心を決めたように口を開いた。 「実は、私……」  そうして、佐々さんの告白が始まった。
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