第5章

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 担任からは何もなかったものの、何故かそれから、クラス中の女子から無視をされるようになった。  その態度は日を追う毎に酷くなり、とうとう、 「深南くんはホモだ」 と、いう陰口まで叩かれるようになった。  今から思えば彼女たちは、彼に特別扱いされた俺の事が気に入らなかったのだろう。  元来、女子とは距離を置いていたから、むきになって言い返したりもしなかったが、その内、クラスの一部の男子からもからかわれて、辛い小学校時代を過ごす事になってしまった。  中学三年間は、ひたすらクラブ活動に打ち込んだ。  当然、サッカー部だったが、小学校で俺をからかっていた奴らとは離れてしまったため、少しホッとした。  先輩にも顧問の先生にも恵まれて、結構楽しい三年間を過ごした。  女の子たちには少し苦手意識もあり必要最低限の付き合いしかしなかった。  それでも何故か、バレンタインデーには知らない女の子から幾つかチョコレートを貰って困惑することもあった。  お返しを考えるのも億劫で、俺よりも多くのチョコレートを貰った兄がホワイトデー近くに買い物に行くのについて行って、適当に目についたものを選んで渡した。  高校は兄とは別の学校にした。  本当は同じ高校に行きたかったのだが、兄の通った学校は県内一の進学校で学力が足りなかったのと、散々、出来の良かった兄に比べられるという経験を中学時代に積んだため、ワンランク下の男子校にした。  それでも、結構偏差値は高かったから俺にしては頑張ったと思う。  そんな高校一年生の初夏――。  俺は今井昌也(いまいまさや)に初めて会った。
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