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沢渡はバツの悪いような切なげな表情で俺をじっと見ていた。
「別にいいよ……もう」
そんな沢渡を見ていたら、怒ることもできなくなってしまった。
「ただ……」
沢渡がなにか告げたそうにぼそりと呟く。
「口移しで水を飲ませてお前が部屋を飛び出した時、猛烈な頭痛に襲われた」
「え……?」
「なんとなく同じような光景をどこかで……って考え出したら急にな」
失われた記憶を無理矢理に引き出そうとすると脳が拒絶反応を起こし、強烈な頭痛を引き起こすことがある。
圭吾はなにか思い出そうとしていたのか――?
「あまり良くわからないことは気にしないほうがいい。悪いけど、今家に自力で帰る気力がないんだ。昼まで寝かせてもらっていいか?」
沢渡になんて声をかけていいのかわからず、結局俺はそんな気のきかないセリフを吐いていた。
「あぁ、好きな時に起きればいい。お前がこんな調子じゃ、今夜の晩酌は無理そうだな」
「おい、俺をアルコール漬けにする気か」
がばりと布団をすっぽり頭までかぶると、沢渡がクスリと笑う気配がした。
「おやすみ」
布団越しに沢渡がそう言葉を残すと、俺は再びまどろみの淵へ堕ちていった――。
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