第八章 不器用に繋がる想い

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「ここの店は沢渡さんの持っている店の中で、結構人気のある方なんですよ。開店前から店の前で待ってるお客様もいらっしゃますし……」 「へぇ……」 「だから沢渡さんもちょくちょくこの店に顔出しに来てくれます」  ケイはよほどこの店を任されていることが誇りなのだろう。話し好きなのはわかったが、俺にとってたいして興味のない店の自慢話にそろそろ飽きてきた。 「けど、沢渡さん、この間の会合の時に怪我しちゃって……最近になって仕事に復帰したって聞いたんですけど心配で……」 「っ……」  ぼんやりとしていた頭に、いきなり直球の話題が飛び込んできて俺は思わず息を呑んだ。 「どうかしました?」 「い、いや」  どう切り出そうか考える手間が省けた。せっかく回ってきたチャンスに乗っからない術はない。
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