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俺の名前は後藤聖哉。
自分で言うのもなんだが、若干二十七歳にして腕利きの外科医で、その他に薬剤師というもうひとつの顔も持ち合わせた類い稀なる秀才だ。
父親は今勤めている後藤総合病院の院長で、いずれ院長の椅子を俺に譲ろうとしている。周りは容姿端麗で頭脳明晰な医者、とちやほやしてくるが“天は二物を与えず”というように、俺にはどうしようもない欠点があった。
「後藤先生、午後一番の予約患者さんのカルテここに置いておきますね」
「え? あ、あぁ、ありがとう」
いつの間にか診察室に入ってきた研修医の山下が、まだあどけなさの残る無垢な笑顔でにこりとする。可愛い顔して学生時代はラグビー部だったらしく、がっちりとしたいい体つきをしている。
山下は今年この病院に入ってきた新米医師で、俺が全般的に面倒を見ていた。
くそ……相変わらず可愛いやつだな――。
真面目で几帳面だし――。
けど、ベッドの上ではすぐに理性をなくす野獣タイプだったりして――。
山下は不思議そうな顔でじっと見つめる俺に視線を合わせてきた。
「どうしたんですか? 俺の顔に何かついてますか?」
「……いや、なんでもない」
「そ、そうですか」
それでも俺の視線が気になるのか、山下は心なしか頬を染めてフイっと目を逸らした。
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