第四章 罪なキス

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「お前は俺の家の庭で転がっていた」 「……は?」 「野垂れ死にかけていたところを俺の部下に拾われたんだ」  な、なんだってぇ――!?  あんなに走ったつもりだったのに、俺は沢渡の家の敷地内すら脱することはできなかったらしい。沢渡に言われて膝を見てみると、擦りむいたような跡があった。 「あはは……なるほどね」  すると沢渡が片膝をついてしゃがむと、俺を見据えた。 「……すまなかった」 「え……?」 「いや、お前に水を飲ませることばかり考えて、お前の気持ちに気を配れなかった。無神経な事をしたと思ってる」  すると、昨夜の光景が脳裏に甦ってくる。アルコールの風味が鼻腔をくすぐりながら、抵抗する間もなく沢渡に水を口移しされた。ほんの一瞬だったが、ゴクリと水を嚥下するとともに、微かに心臓が疼く気配を感じた。 「なんだよ、今更……」  あの堅物で、サイボーグのように表情がないと思っていた男が俺に謝罪の言葉を述べている。
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