15人が本棚に入れています
本棚に追加
錆びれた町の酒場。そこに集うのは昔を懐かしむ老人か、それとも無法者か。
一人の老人が酒場のカウンターに座っていた。少し離れたテーブルには酒を煽る荒くれ者達。顔に奇妙なペイントを施した男たちは酒を煽っては自分の武勇伝を語る。
そこに一人の男が入って来た。男はゆっくりと店の中に入るとサングラスを外した。
『水をもらえるか?』
男は老人に声を掛けた。老人は男を一瞥すると小さく頷いて立ち上がりカウンターの中へと入って行った。
『悪いが、これだけしか譲れないな』
老人が申し訳なさそうに言うと男はボトルに入った水を受け取った。ボトルを握りしめた男は
『十分だ』
と、口許を緩めた。
『昔はこんな風に水に困ることはなかったんだがな…。わしの爺さんの爺さんが若かった頃は、この星は水に溢れていたって話だ。わしもそんな頃のこの星を見てみたかったよ』
老人は遠いどこかを見つめると、そう言った。
『いつの話だよ。爺さん、そんな夢物語は忘れちまいな』
酒を煽っていた男たちが老人をからかうように下卑た笑い声を上げる。
最初のコメントを投稿しよう!