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男は風の音に混じって聞こえてくる音に気付いた。だんだんと近づいてくるその音。それは聞き慣れた仲間の一人ケンジロウのバイクのエンジンの音。
男は立ち上り砂の大地に目を凝らす。音のする方向から走ってくるのは間違いなくケンジロウだった。
彼は何かを探すようにバイクのスピードを緩めるとゆっくりと大地に右足を下ろした。
『リュウジ―』
ゴーグルをずらして周りを見回したケンジロウは男に気付いて声を上げた。男はそれに答えるように、にやりと笑って左手を上げた。
『やっと来たか』
バイクを止めリュウジに歩み寄ってくるケンジロウ。リュウジはケンジロウを迎えると差し出された手を握り体をぶつけ合う。
『まだ俺らだけなん?』
『ああ』
『なんや、急いで損したわ』
そう言いながらも微笑みを崩さないケンジロウの笑顔にリュウジの顔も緩んでいた。
『ん?』
リュウジが何かに気付いたように首を動かした。
『タカノリも来たみたいやな』
ケンジロウも気付いたように嬉しそうに声を上げた。二人が振り返ると、砂埃を巻き上げ彼らに向かってくる男の姿が見えた。
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