エピローグ

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―――?―――  焼け焦げた家の屋根から朦々と登る黒い煙。  未だ燃え続ける炎はゆらゆらと揺れ動き、闇夜を怪しく照らす。  焼け落ちる建物がだった物がパチパチと弾ける音をだけ残し、辺り一帯は静寂により支 配されている……。  村人だったと思われる肉塊や消し炭が無作為に散乱、形状は様々だが、彼らが動く事は まずもうないのだろう……。 「まーた、派手にやってくれちゃって……」  静寂を打ち破る一言。 「加減ってモノを知らないなぁー。」  その場に響く明るい声、発信源には人影がひとつ――。深緑色の外套、顔はフードにス ッポリ覆われ、表情は読めない。散歩するような軽い足取りで進んでいく。 「それにしても魔力、濃いな……。少し胃もたれしそうだ……。魔術耐性が強い一族だっ たんだっけ……? あたしには関係ないけど……」  誰に話すでも無く呟きながらあたりの様子を伺う、そして急にパタリと歩みを止める。  そのフードの奥の視線の先には横たわる一人の少年。 「ん?」  不意に視界に入ったソレ、頭から血を流しているがようだが僅かに胸が上下している。 「これはこれは……おーい、生きてるー? って聞こえるワケない、か……」 「……う……ぁ……」  絞り出すように口から出された、か細い声。青い瞳が見開き、視線が虚空を見上げる。 「誰か――……そこに……いる……の……?」  かすれる声で問いかける。 「えっ! キミは――……うんっ! いるよー」  少し驚いた気配がある人影。生存者が居た事に安堵している訳ではなさそうだ。 「早く――……ここから、逃げて……」 「あららら? ……キミはどうするのかな?」 「ボクは……大丈夫だから……あなた、だけでも……ここから、早く……逃げ――……」  そこまで言いかけ、少年の意識が途絶えたらしく、ピクリとも動かなくなった。 「……もっしもーし?」  返事はない。 「ふむ……助けを乞わないのには。ちょっとビックリした、かな……」  少年を見定めるようにじっと視線を落とす。 「人と話すのも……久しぶり、かな……キミに少しだけ興味が沸いたよ」  光の届かないフードの奥で見えるはずの無い表情。それが、ほんの少しだけ笑ったよう な気がした……。  外套の中から少年に向け伸びる白い腕、手のひらをかざし、その先の空間に出現する不 思議な淡く白いい光。
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