エピローグ

3/3
前へ
/3ページ
次へ
 手のひらが徐々に少年に近づき、光を中心に波紋のように空気が揺らぐ。手が触れた所 で光が少年へと移動し少しずつ光が広がり、ついには全身がすっぽりと包まれてしまう。 「……人に心配された事って、生まれて初めての体験なんだよね……。というワケでこれ はあたしからの感謝の気持ちってことで、ありがたく受け取ってね」  徐々に光が強くなり、痛いくらいの真っ白な激しい光が辺りを包む……。 「……あ、れ――……?」 ―― 見えるハズのない笑顔が凍りつく ――  光が徐々に弱くなり、やがて辺りが暗闇を取り戻す。ゆらゆらと揺れ、その場を照らし ていた炎も根こそぎ掻き消されてしまっていた。  そこに残っていたのは――……顔色の良くなった少年と、小さな水晶だけ――。  外套の人影はそこにはもう居ない。  少し遅れて、空気が熱気を失った事に気付いたせいで、嵐のような風が吹き荒れる。  風が少し穏やかになるころには、村だった場所には、見る影もなくなった無残な町並み と、廃墟を包む暗く冷たい静寂だけ――。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加