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手のひらが徐々に少年に近づき、光を中心に波紋のように空気が揺らぐ。手が触れた所
で光が少年へと移動し少しずつ光が広がり、ついには全身がすっぽりと包まれてしまう。
「……人に心配された事って、生まれて初めての体験なんだよね……。というワケでこれ
はあたしからの感謝の気持ちってことで、ありがたく受け取ってね」
徐々に光が強くなり、痛いくらいの真っ白な激しい光が辺りを包む……。
「……あ、れ――……?」
―― 見えるハズのない笑顔が凍りつく ――
光が徐々に弱くなり、やがて辺りが暗闇を取り戻す。ゆらゆらと揺れ、その場を照らし
ていた炎も根こそぎ掻き消されてしまっていた。
そこに残っていたのは――……顔色の良くなった少年と、小さな水晶だけ――。
外套の人影はそこにはもう居ない。
少し遅れて、空気が熱気を失った事に気付いたせいで、嵐のような風が吹き荒れる。
風が少し穏やかになるころには、村だった場所には、見る影もなくなった無残な町並み
と、廃墟を包む暗く冷たい静寂だけ――。
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