第3章

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「わあああああ!! それがリリィなんですよ!」 「はぁ?」 「リリィ! 今助ける!」  まったくいう事を聞かない両腕を体を捻る事で振り回し、キュレの静止をほどき、石に 体当たりを掛ける。――が、まったくびくともしない。 「スグラ! お前何してんだっ!」 「……コアードさん、事情は私が後で説明します。ですから、あの岩どかしてしまっても いいですか?」 「しかし、だな……」 「大丈夫です。あの人形はもう人を襲ったりしません。スグラが無力化しています。フラ カが作ったあるアイテムを使ったらしいんです。  でも、それきちんと管理しないと不安定なものだし、スグラしか扱えない物で……」  もちろん大嘘だ。師匠が作ったアイテムなど使ってない。  だが、スグラの能力を隠しながら、コアードとオルを納得させるにはフラカの名前を出 した方が、より正統性を増す事をキュレは知っている。  その上、キュレ自体の信用度が高いのだからもちろん説得力も高い。 「……危険は無いんだな?」 「はい、大丈夫です。私を信用してください」  にっこりとキュレが微笑む、それが決定打となった。 「……分かったよ。おい、オル、この岩、どかすぞ」 「うん」 「私も手伝います」  両腕が使えないスグラがオロオロするなか、コアード、オル、キュレの三人が岩を押し どける。  岩の真下にあたる場所を、二メートル近く三人掛かりで掘り進めると変化に気付く。 「……むー」 「い! 今、声したよな?」 「はい、あ、何か見えてるわ……。あれは、指?」  そう言うとすぐにキュレは人一人が余裕で入れる穴の中に飛び降りた。 「このまま掘っちゃうと、シャベルでリリィが怪我しちゃうかも……」  あごに親指を当て、思考を巡らせるキュレだったが……。 「ちょっと痛いかもしれないけど、いい子だから我慢してね」 「……むー? んんっ!」  縛られた手首を右腕で掴み、強引に引っこ抜こうとするキュレ。 「痛い! 痛いから! 痛いってば! いたたたたたっ!!!」 「もう少しなんだけど、なっ! あ、抜けた。」  土砂の中から泥まみれの人が引っこ抜かれた。勢い余って放り投げそうになるが、上手 くキュレの腕の中に納まる人形。  その姿は悲惨なもので、頭には所々裂けた黒い袋が被され、首あたりを雑に藁の紐で縛 りあげられている。  後ろ手の状態で手足も縛られている為、身動きなど取れそうも無かった。
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