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服などは着せられてもおらず全裸のまま、おまけに身体中は泥まみれという状態だ。
「……ちょっと待ってね」
地上に戻ってきたキュレは手足の拘束と顔の袋を丁寧に取り除いた。
「ぷはっ! もうちょっとやさしくしてよっ!」
「リリィ! 良かった! ちゃんと出来たんだ! 消えてないよ!」
「あ、スグラ……」
抱きしめようとしたが、腕が上がらないのを忘れていた。
「あはは、……ダメだなぁ……腕上がらないの忘れてた」
「……その腕、あたしを移す時に……」
「ごほん、ごほん! ほら、リリィ? あなた泥だらけじゃない! 身体洗って来ないと
ダメね、それに裸だし」
「あ、うん。でも平気だよ」
「だ め な の!」
「……はい」
笑顔で威圧をするキュレに対し、言葉を引っ込めるリリィ。
「……どういう……事だ? 見た目が、変わっている」
「そう、だね」
目の前の光景が何が起こっているのか理解が追いつかず、コアードとオルが二人して目
を白黒させている。
「コアードさん、裏の家に置いてある服、使ってもいいですか?」
「【祈祷の間】のか……。おう、使っても大丈夫だぞ。
一応今朝、用心の為と思って【祈祷の間】も危険が無いか確認しておいた。問題はない。
それと聖殿祭のしきたりやらなんやらは、ここの祠の調査が完璧に終わるまでは一端中
止ということになった」
「分かりました。ありがとうございます。
じゃあ、私が連れて行きますね。スグラも付き添いで、来て」
「分かったよ」
「……うん」
ぶらんと垂れたスグラの右手の人差し指を少女の手が軽く摘まむ。不思議と痛みは感じ
ず、そのまま三人は歩き出した。
「おい、リリィ……」
後ろからコアードに声を掛けられ三人同時に振り返る。
「その、何だ……すまん」
「……別にいいよ。普通、人間はそうすると思うから」
「ッ! ……――そう、か」
言葉を返す事が出来なくなったコアードとオルを残し、今度こそ三人は【祈祷の間】へ
と移動した。
▼△▼△▼
「ちょっとキュレ、冷たいんだけど。泡が目に入って痛いんだけど……!」
「ちゃんと目、瞑ってなさい。冷たいのは我慢しなさいな」
「うー」
「はいはい、暴れないのは偉いわよ」
「この身体じゃ、……キュレには勝てそうもないし」
祠の裏、【祈祷の間】に流れる小川のほとりに腰を掛ける二人。
「あら? そうなの?」
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