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「……そもそも、あたしは……スグラの家族に手を出す気がない」
「ふふふっ、最初からそう言いなさいな」
「……もー! スグラはどこ行っちゃったのー!」
頭をブンブンと振りまわし、今の感情を表すがキュレはまったく気にした様子もなく微
笑んだままだ。
「スグラお兄ちゃんはあなたの着れる服を探しに行ってるの。帰ってくるまでに綺麗にし
ておこうねー」
「……ものすごーく、子供扱いしてない?」
「そんな事ないでちゅよー」
「してるじゃん!」
「ふふふっ、だってリリィ、可愛いんだもの。これくらいは許してよ」
「可愛い? キュレって感性が変なんじゃない?」
「そうかしら? シアンも同じ事言うと思うけどなぁ。もちろんスグラも。はいリリィ右
腕上げてー」
「可愛い? あたしが? 変なの」
水浴びをしながら身体の汚れを流していくリリィ、ただキュレが体の隅々まで洗い回し
ているだけだが、リリィは対した抵抗も見せずに受け入れていた。
「そういえば、さっきのあれってやっぱり魔法なの? 傷だらけで動かなかったスグラの
腕、みるみる治しちゃったし」
「魔法……みたいなもんだよ。あたしの能力でスグラの怪我してる所の細胞を活性化させ
て完治させたんだ」
「細胞の活性化、ねぇ……。治癒魔術みたいな物と思っていいのかな? そもそも治癒魔
術自体がレアな代物だからあまり想像がつかないわ。」
「あたしは、エネルギーと呼ばれる物なら何でも魔力に変えちゃう訳、もちろんその逆も
出来るんだよ。そういう訳だから、あたしの魔力をスグラの腕を治すエネルギーに変換し
た、って思ってくれたら分かるかな?」
歩いてここに来る途中、スグラの腕に治療を施したリリィ。
やったことは、お互いに向き合い両手を繋ぎ目を閉じるというもの。それを目の当たり
にしたキュレは驚きを隠せなかった。
スグラの言葉を一〇〇パーセント信じている訳では無かったキュレは、この動いて喋る
人形がシアンを傷つけた事に警戒もしていた。だが、中身はこのリリィが倒してしまった
上、今この人形の中に存在するのはリリィという複雑な状況が少しずつ慣れていった。
そして、何よりこのリリィという少女と話すうち、危険性が無い事を自覚していった。
「ふぅん、何となく分かったわ。リリィは優しいのね」
「そう? 初めて言われた」
「ふふふ」
「うん、やっぱキュレは変だと思うな」
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