第3章

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「キュレ、こんなのしかなかったんだけど……。うわぁっ!!」  リリィ用と思われる服を抱きしめながら走ってきたスグラが派手に転んだ。 「ん? 何してんの? スグラ」 「ちょ、前! 隠して! 前!」 「キュレ。スグラが何か変だよ? 顔赤い」 「あはは……スグラ、服そこに置いて、ここは私に任せていいから……まだ時間掛かると 思うし、コアードさんに今後の事を聞いて来なさい」 「う、うん。任せる」  脱兎の如くその場から逃げ出すスグラの後ろ姿を二人が見送る。 ▼△▼△▼ 「スグラ……。あれは何だ?」  【祈祷の間】から戻ってきたスグラに対し、出会い頭に質問を投げるコアード。 「よくは分からないです……。ただ、リリィ自体に敵意は無いと思います。」 「……そうか、そうだよな……」 「一つ言える事は、僕とクニルに襲いかかって来た人形からリリィは身を挺して守ってく れたんです」 「……悪い奴じゃ、無いんだな」 「ええ、それは間違いないと思います」 「分かった。俺はもう、あいつを疑うのを止める」 「そう、ですか……」  安堵の息が漏れた。 「……オルさんは?」 「僕は、コアードがいいなら、いい」 「はぁ……」 「……まぁ、元からこんな奴だ。気にするな」 「分かりました。それで……これからどうするとか、何か決まってたりするんですか?」 「決まっている事はこの祠の徹底調査くらいだな。今日起きた事は全て村長には伝えてい る。ただし、村民にこの事実を知らせるにはまだ早い。  この事を知っているのはスグラの家族、村長と俺とオル、そしてクニルだけだ」 「……ゴニアさんにはまだ何も知らせて無いんですか?」 「ゴニアには、断片的には伝えてある。だが後で俺が言っておくよ」 「お願いします」 「なるべく大事にはしたくないんだ。しばらくは苦労を掛けると思うがよろしく頼む」 「苦労、ですか? そう、守護者であるお前が村をうろつくのはあまりいいもんじゃない からな」 「ああ、そういうことか」  普段祠から離れないはずの守護者であるスグラが普通に村を出歩くのは、村の人にとっ てみたらそこにスグラが居るだけで不審に思われる、という訳だ。 「クニルの事は任せておけ、ゴニアも居る。アイツが上手くやってくれるだろう。あと言 い辛いんだが……」 「何です?」 「出来ればスグラにはここの【祈祷の間】の家で生活して欲しいと思ってる。もちろんこ
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